【自家用機で島にやってきた男たち】

これは礼文島に長く滞在していたときのお話。

この島へのアクセスは基本的には2種類ある。
ひとつは一般的なフェリーなどでの船でのアクセス。もう1つは一応はこの島には空港もあるので空路でのアクセス。
ただ、空路での方に関しては場所が船泊という町の近傍という島の北のほうに位置するので、そこからのアクセスが不便だというのと飛行機が19人乗り という小ささで、天候次第では運休もよくあることもあってあまり利用している人を見かけたことがない。もっとも、一番の理由は値段か・・・なんせ片道の値段でフェリーなら礼文−稚内を2往復出来ますから(爆)
基本はコミューター路線ですから・・・『観光客を運ぶ』というのとはちょっと意味合いが違うんだろうか。

私が泊まっていた宿はこの空港から徒歩でも行ける場所にあったため、昼寝がてらに空港近辺の丘へと足を運ぶことも多かった。
丘に寝転がっていると『ぶーん・・・』ってプロペラ音が鳴ったと思ったら、例の小さな飛行機が着陸しようとしているところだったり・・・
なんか・・・プロペラ機ってのはかわいらしいもので、暇なときにはその姿をぼーっと見ていたりしていたものだった。

そんなある日のことだった。
宿のオーナーが

『明日、飛行機でお客さんがくるぞ。』と一言。

そりゃ・・・一応はここも定期路線だし、この宿は空港から徒歩圏内なんだからそういう人もいるだろうよ・・・
なんて思っていたんだが、

『でも、自家用機だってよ!』

の一言に驚いた!
はぁ??自家用機で島に来るって??
一体・・・その人ってどのようなご身分で??
実は何処かの大富豪がお忍びでこの島にやってこられるとか?(爆)
想像はどんどん膨らんでいく私たちであった・・・

さて、当日。折角だからその自家用機ってぇ奴を一目見ようと私たちはその日は島を歩き回るのをやめて『自家用機お迎えツアー♪』なんて銘打って空港へと足を運んだのだった。
すると、到着予定時刻にいつも見慣れている19人乗りの飛行機(DHC-6という奴らしい)よりももっと小さな飛行機が飛んできた。
おぉ・・・あれかぁ。でも、ちとボロいなぁ・・・なんて感想は失礼?(笑)

そしてその飛行機は着陸して、そのままゆっくりと滑走路を走って空港の建物の近くまでやってきた。
ドアがあいたぞ!どんな奴だ??

出てきたのはおじさんというより・・・おじいさんに近い初老の方々が数名。
この方々って・・・どういう方々??
なんか想像がどんどん膨らんでいたので、その予想と違うものを見てしまって『がっかり』というよりは『きょとん』としてしまった私たち。

さて、そのお客さんたちは宿の車で宿へと向かった。私たちは遅れて徒歩で戻る・・・
そして、夕食の時間になったとき、そのお客さんと私たちとの格差に目を見張った!
並んでいるものが全然ちゃうやんか!!(爆)
聞いたところによると、その人たちは島の観光センター経由で予約を取ったらしくて、空港に近いとかその他色々と理由があったのかも知れないが何故か私たちの泊まっている宿へと割り振られたらしいのだ。
てなわけで、彼らからは宿の民宿の協定料金というのを徴収するらしい。(当時6800円だったかな?)
私たちはその協定料金ではなくて、もっと安い値段で泊まらせて貰っていたのでこの差が出たそうだ。
もっとも、この宿は『安くて美味い飯を食わせてくれる』ってのがモットーの1つだったので、安い値段で泊まっている私たちでも充分なボリュームではあったのだけれど、それに加えて彼らには毛がにが一杯付いたりウニもあったり・・・まあ豪華な品揃え!
でもなぁ・・・ウニと毛がにはシーズン違うぞ!毛がにはどこから入手したんだろう??まぁいいけど(笑)

そのうち、彼らはじゃんじゃん酒を飲んでご機嫌な感じ・・・
ちょっと宿の雰囲気としては違うよなぁ〜なんて目をひそめたけれど、オーナーがひそっと一言。

『お酌でもして適当に話合わせていけば小遣い貰えるかもしれんぞ!』

おぉ!それは・・・って思ったけど、お酌なら男の俺がするよりは・・・でも、なまじ女の子がしても色々と面倒が起きそうだし。
もう、今宵は仕方がない・・・主役はこのお客様たちってことで私たちは静かにして、その人たちが不快な思いをしない程度に気遣っていったのだった。

さて、翌朝のことである。
そのお客様たちが私たちに『昨日は飲んで騒いでしまって済まなかったね』って詫びて来た。
まあ、こちらもただ飲んで騒いだパワーにただただ何も言えずにいただけだからってだけで別に嫌いだったわけじゃない。そんなわけで改めて色々とお話を聞くことが出来たりした。

聞いたところによれば、彼らは元々飛行機の整備会社に勤めていて定年退職した仲間だという。
それで、その退職金の中からみんなで金を出し合って、中古ではあるけれど今の飛行機を購入して、時折みんなでこうして飛んで廻っているらしい。
折角だから、私たちの飛行機を見学していきなさいとも言われて、喜んで私たちは見学させてもらったのだった。
本来は一般の人は空港内には立ち入り禁止なのだが、ここはローカル空港だしってことでおじさんたちがうまく話をつけてくれて特別に空港内へ入った。

飛行機は9人降りだったかな・・・
操縦席に2つ座席があって(正・副2名必要ですからね)、あとは後ろに7席。
思ったより狭い感じ。コクピットはさすがに計器だらけ・・・どこをどういう風に見ればいいのかなんて分かるわけがない。

彼らは全員で8名。みんな整備会社の人だったから当然飛行機の整備は手馴れたもので・・・しかも全員パイロットの資格も持っているという。
ひぃ〜っ。ちょっと格好いいかも・・・(現金な奴だと思う・・・自分でも・笑)

飛行ルートとかってどうなんですか?って質問したら、やはりこの飛行機だと航行距離に限りがあるからあちこちの空港を寄って廻ってきたらしい。
東京の調布を皮切りに仙台・三沢・函館・千歳・稚内と。
そんな感じで各地で泊まっても来た訳だけれど、礼文はなかなか美味いもの食えて良かったよって言ってくれた。
やっぱ・・・自分が好きなところを誉められるのは他人事じゃない気もするもんで・・・
なんか嬉しくなったりする。別に自分がそれを提供したわけじゃないのに・・・(笑)

そんなこんなで、彼らは再びフライトの準備に取り掛かった。
私たちはここで空港の外へと。
折角だからお見送りもしましょう・・・って外で一列に並ぶ。
エンジンが掛かってプロペラの回転数があがっていく。
彼らは私たちのほうを見て、チラッと一礼した後に離陸へと・・・
あっという間にふわっと機体が浮いて、私たちの上をくるっと旋回して稚内へと向かって去っていったのだった。

まあ、きっと自分には出来ないだろうな・・・パイロットの資格も航空機を持つこともないだろうな(笑)
なんて思いつつも、こういう楽しみってのもあるのね・・・やっぱ格好いいかも♪
なんてちょっと別の世界に触れて、感慨にふけった私だった。

自家用機のあとはこの島に自家用のクルーザーで現れたりした人・・・の話?
残念ながらまだそちらは出会ったことはない・・・(爆)
でも、自分の夢の一つではあったりする。自分がいつかやってやろうと。
もっとも、いつ実現するかという点でかなりの課題が山積みではあるのだが(笑)


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