【前篇 『旅立ち・・・』】
高校生の頃は『青春18きっぷ』などで各駅停車の乗り継ぎの旅ばかりを続けていた私だったが
その後、社会に出るようになって適当な収入が望めるようになってきたら金銭的にも多少は余裕が出てきて、その頃には北海道へのアクセスも青函連絡船から青函トンネルを利用しての新幹線→特急乗り継ぎへと変わっていった。
もっとも、青函連絡船には夜行便があったので各駅停車の乗り継ぎでも北海道入りは出来たのだが、そ れが無くなってしまうと物理的に各駅停車のみでの北海道入りは不可能になってしまったのだが・・・
それでも、当時あった『北海道ワイド周遊券』であれば夜行の急行『はまなす』も使えるのだが、その 列車へのアクセスで困ってしまう・・・
社会人の限られた休暇で時間をうまく使いたければ、やはり新幹線乗り継ぎが効率がいいということで もっぱらこのルートを愛好していた。
その後・・・もっと有効にということで休暇前日に仕事を終えた後に、夕方の羽田−千歳の飛行機でとい う手段を用いるようにはなっていったのだが・・・
でも、少しでも時間があるのならば鉄路での北海道行きというのは捨てがたいものだった。
できれば
『新幹線ではなく夜行列車で行きたいなぁ・・・』
ってのも常々思い描いていたことだった。
折りしも、青函トンネルが開通して道内へ鉄路で繋がったということで、寝台特急『北斗星』がデビュー したりもしたので一度はねぇ・・・って思っていた。
ただ、社会人となってからは長く取れる休暇といったらお盆の頃などというのが通例で、その時期の 『北斗星』のチケッといったら、まさに『プラチナチケット』である。
私も取ろうと予定の1ヶ月前に駅が開くのを待って窓口に並んでみたりもしたことがあったが、やはり 取れなかった。 この事は自分にとってはかなり珍しいこと。
基本的にわざわざ並ぶという行為が嫌いな人間なので、これは最初で最後だろうと思うが・・・(苦笑)
それで、多客時に運行している臨時寝台特急『エルム』の方に目をつけてみた。 こちらはそれほど知名度が無いのか・・・それともB寝台のみという『北斗星』に比べると"華"がないからなのか知らないがチケットには余裕があり、何とか予約が取れたのだった。
但し、それでも上段の寝台ではあったのだが・・・
それでもとりあえずは『北斗星』のキャンセルももしかしたら出るかもしれない・・・という微かな望みを 抱きつつ、『エルム』のチケットを持ちながら休暇までの日々を過ごしたのだった。
私、よくこの手は使います。
『押さえのチケットで本命を待つ』
JRのチケットは1回に限って手数料なしで変更は可能ですから。
もっとも・・・それで本命のチケットが入手出来たってことはそうそう無いのですが(笑)
結局というか、やはりというか『北斗星』のチケットは入手できないまま、休暇当日を迎えてしまった。
ちょっとだけの失望とやはり夜行列車でそのまま北海道へ行ける!って期待感を持って、私はちょっと。いや、かなり早めに上野駅へと向かった。
別に自由席ではないのだから早く行く必然性なんか全く無いのだけれど、何となく昔からの癖なんだろうか?
なんとなく長距離列車の出る上野のホームの雰囲気が好きなんですよね。
軽く食事もとってしまってからホームでぼーっとしてると、本来乗りたかった『北斗星』が入線してきた。
ついつい・・・チケットが取れなかった恨みはなかったのだけれど(ほんとか?)
『こいつにはどんな奴が乗ってるんだっ!』
と列車を凝視してみたが、当然のことながらごく普通の方々ばかりだった(爆)
そうしていううちに、私が乗り込む『エルム』も入線。
車内に乗り込むと、やっぱ華が無いなぁ・・・
そりゃ、当時自慢の『ロイヤル』も『グランシャリオ』(食堂車)もないですから・・・
当時はまだもっと豪華版の『トワイライトエクスプレス』も『カシオペア』も無かった時代。 この列車が国内最大級の豪華さを誇っていましかたから・・・
とか思いながらも、この『エルム』でも、“ごく普通”の寝台列車ではあるけどこのまま札幌まで行ける んだということを思えば、多少は心が浮き立ってくるもんだ。
私は自分の指定である上段の寝台に荷物を放り込んで、通路側にある寝台列車独特の折りたたみ椅子に 腰掛けてビールを片手に一服・・・
そうしているうちに人がやってきた。
どうも学生らしき若い男のひとである(自分も当時充分若かったのだが・・・)
彼は私の下の寝台のようだ。
何故かお互い目が合って軽く会釈しちゃったりして。いや、会釈ってほどではないな。黙礼って感じだっただろうか。
まぁ、お互い何か縁があって同じ列車に乗り合わせたんだから敵対心は持つことはないし、馴れ馴れし過ぎの友好ってのもなぁ・・・って意識だったんだろうか?
もっとも、寝台列車って寝台ばかりが並んでいるだけな部分って否めないので、意外と隣り合わせたという だけじゃ話し掛けづらいものも無いわけではなくて。
その辺は座席の列車とは違うとこでしょうか?
もっとも・・・どんなシチュエーションでも全然縁が無い場合もあるのだが(爆)
さて・・・そうしているうちに列車は静かに上野駅のホームから滑り出していった。
結局、向かい側の寝台にはこの駅では乗り込んではこなかったようだ。
ホームを出てしばらくして、地上へとあがった列車の車窓には東京の夜景が見えてくる。
まあ・・・上野から北に向かう場合の車窓って、お世辞にもオシャレとは言いがたい風景だけれど(苦笑)
今回の旅はどんなことが待ち受けているんだろうか?
そのときの私にはその後待ち受けていることなんか・・・わかるはずもない。
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